yuuki oosaka

1. PMBOKの位置づけ(全体像)

flowchart TB
    PMBOK["PMBOK<br/>(憲法的位置づけ:最上位の理念・共通言語)"]

    PMBOK --> PRED["予測型マネジメント<br/>(旧6th的・プロセス重視)"]
    PMBOK --> AGILE["アジャイル型マネジメント<br/>(原則・チーム自己組織化重視)"]

    PRED --> WBS["WBS/ガントチャート/EVM等の技法"]
    AGILE --> SCRUM["スクラム"]
    AGILE --> CRYSTAL["クリスタル"]
    AGILE --> KANBAN["カンバン ..."]

    style PMBOK fill:#fff4e6
    style PRED fill:#e8f4f8
    style AGILE fill:#ffe6e6

要点


2. 旧6th方式(予測型マネジメント)とPMBOKのマッピング

位置づけ

旧6th版は「プロセス」という具体的手順書そのものだった。第7版でPMBOKはこの実務層を一度手放し、第8版で「非規範的プロセス」として部分的に復活させたが、あくまで参考カタログとしての位置づけであり、6th版のような強制力・具体性は持たない。

flowchart LR
    subgraph SIXTH["旧6th版(実務そのもの)"]
        KA["10ナレッジエリア"]
        PG["5プロセスグループ"]
        P49["49プロセス(ITTO込み・規範的)"]
    end

    subgraph EIGHTH["PMBOK第8版(理念+参考カタログ)"]
        PD["7パフォーマンスドメイン<br/>(機能軸・6thのKAに相当)"]
        FA["5Focus Areas<br/>(6thのProcess Groupsに相当)"]
        P40["40プロセス(非規範的・任意参照)"]
    end

    KA -.機能軸として再編.-> PD
    PG -.時間軸として再編.-> FA
    P49 -.簡素化・任意化.-> P40

    style SIXTH fill:#e8f4f8
    style EIGHTH fill:#fff4e6

詳細マッピング

旧6th版の要素 PMBOK第8版での対応 位置づけの変化
10ナレッジエリア 7パフォーマンスドメイン ほぼ同じ機能軸だが数を整理・統合
5プロセスグループ 5 Focus Areas 名称変更のみ、概念はほぼ同一
49プロセス(規範的・必須手順) 40プロセス(非規範的・テーラリング前提) 「必ずやる手順」から「必要なら使う選択肢」へ性格が根本転換
ITTO(Input/Tool&Technique/Output)を暗記する体系 Inputs and Outputs / Tools and Techniques(参照カタログ) 暗記対象から参照辞書へ
WBS、ガントチャート、EVM等の実務技法 各パフォーマンスドメイン内で言及されるが、詳細手順は現場のツール・実務書に委ねる PMBOKは「何を使うか」を示すが「どう使うか」の深掘りはしない

実務での使われ方


3. アジャイル方式(スクラム、クリスタル、カンバン等)とPMBOKのマッピング

位置づけ

アジャイル手法群は、そもそも「プロセスに従って計画を実行する」という思想を持たない。不確実性を管理対象ではなく前提として受け入れ、チームの自己組織化と適応力で対応するという別の哲学に立つ。PMBOKの原則層(第7版で導入)は、この思想を後追いで取り込む形で生まれた。

flowchart TB
    subgraph PMBOK8["PMBOK第8版"]
        PRIN["6原則<br/>(場を満たす価値観)"]
        DOM["7パフォーマンスドメイン<br/>(道具箱・機能領域)"]
    end

    subgraph AGILEMETHODS["各アジャイル手法(独立発展)"]
        SCRUM2["スクラム/クリスタル/カンバン/XP<br/>役割・イベント・成果物"]
    end

    PRIN -.共通の価値観として反映.-> SCRUM2

    SCRUM2 -.実務知識としてPMI-ACPが体系化.-> ACP["PMI-ACP<br/>(具体的アジャイル実践知識)"]

    DOM -.部分的に対応可能.-> SCRUM2

    style PMBOK8 fill:#fff4e6
    style AGILEMETHODS fill:#ffe6e6
    style ACP fill:#e8f4f8

詳細マッピング

アジャイル手法の要素 PMBOK第8版での対応 補足
スクラムの役割(PO/SM/開発チーム) Resources / Stakeholdersドメインに部分的に対応 PMBOKは役割を規定せず、機能(誰が何を管理するか)のみ言及
スプリント(反復サイクル) 「短いライフサイクルの反復」概念、開発アプローチ(Adaptive)の記述 PMBOKは反復の存在は認めるが、スプリント運営の具体作法(タイムボックス等)は規定しない
プロダクトバックログ Scopeドメイン 概念は対応するが、バックログ運用のノウハウはスクラムガイド側の専売特許
Definition of Done Embed Quality原則 原則レベルでは重なるが、具体的な運用はPMBOKの範囲外
クリスタルのチーム規模別プロセス選択 Tailoring(第8版第3章) 「プロジェクトの文脈に応じて調整する」という思想は共通
カンバンのWIP制限・フロー最適化 対応する明確な概念なし PMBOKにはフロー効率という考え方自体が薄く、カンバンはPMBOKの外側で独自発展した体系
自己組織化チーム Build an Empowered Culture原則 第8版で明確に原則化された数少ない直接対応
ふりかえり(レトロスペクティブ) 明確な対応なし(Lessons Learnedに近いが弱い) PMBOKの継続的改善概念は薄く、各手法側が主導

実務での使われ方


4. 全体まとめ

観点 旧6th的マネジメント アジャイル(スクラム等)
対応する哲学 計画→統制、不確実性を減らす 検知→適応、不確実性を前提とする
PMBOKとの距離 プロセス層(40プロセス)で部分的に接続 原則層(6原則)で部分的に接続
実務で直接参照するもの 6th版実務知識、各種PMツール スクラムガイド、クリスタル、カンバン等の原典
PMI資格との対応 PMP(旧来寄りの内容も含む) PMI-ACP
PMBOKの役割 「憲法」として、両者が異なる哲学を持ちながらも同じ土俵(原則・パフォーマンスドメイン)で語れるようにする共通言語  

結論 PMBOKは実務そのものを規定するガイドではなく、予測型・アジャイル型という異なる哲学を持つ方法論群が、組織内で共通言語として会話するための最上位フレームワークという位置づけが最も実態に近い。現場チームが日常的に参照するのは、それぞれの具体的方法論(6th版実務知識、スクラムガイド等)であり、PMBOKはPMOレベル・組織横断のガバナンスレベルで参照される性格が強い。