石破政権の業績と評価
石破茂首相が2024年10月に発足させた石破内閣では、物価高対策や教育・子育て支援、賃上げ促進などを掲げた政策が進められている。政府は備蓄米の売り渡しによる米価安定策を実行し、税制改正で所得税の「103万円の壁」を緩和(基礎控除を47万円増額)して納税者約8割の負担を軽減した。教育面では高校授業料の無償化を大幅に拡大し、2025年度から所得制限を撤廃、国公私立問わず年11.88万円を給付することとした。児童手当も抜本的に拡充され、所得制限を廃止し支給対象を高校生まで拡大したほか、女性活躍や育休拡充にも取り組んでいる。経済政策では、名目GDP1,000兆円(2040年目標)・平均所得50%増を公約とし、2029年度までに実質賃金年+1%程度上昇を目指す5カ年計画を進めている。外交面では大阪・関西万博(2025年)を機に20か国以上の首脳と対面会談を重ね、対中抑止を含む日米同盟強化を訴えた。自由で開かれたインド太平洋(FOIP)構想の堅持も表明し、周辺国との地道な対話を続けている。このほかサイバー詐欺・インフラ対策や災害対応力強化、社会保障改革などの政策を打ち出した。なお、初期の世論調査では石破内閣の支持率は予想外に低迷し、安倍以降10政権中9位にとどまるなど苦戦している。
- 教育・子育て支援: 2025年度から高校授業料の所得制限を撤廃し、年11.88万円を支給する無償化政策を実現。児童手当も抜本拡充し、所得制限を撤廃して支給対象を高校生まで拡大した。これにより高等教育無償化の拡大など、マニフェストで掲げた教育支援策が着実に進んでいる。
- 税制・家計支援: 「103万円の壁」を見直し、所得税基礎控除を47万円増額して課税最低限を160万円とした。物価高対策として政府備蓄米の売り渡しを推進し、米価安定化に努めている。NHK世論調査では備蓄米政策への評価が74%に達した。
- 賃上げ・経済政策: 石破政権は「物価上昇を上回る賃上げ」を重視し、名目GDP1,000兆円・平均所得5割増を目指す公約を自民党公約に盛り込んだ。2029年度までに実質賃金年+1%の上昇をノルム化する計画を開始し、中小企業支援などで賃上げ環境を整備している。
- 外交・安全保障: 就任後9カ月で20カ国以上の首脳と会談するなど積極的な対話外交を展開。所信表明では日米同盟の「米英並み」の強化やFOIPの堅持を訴えた。憲法改正にも言及しつつ、従来路線の延長上で防衛力強化を図っている。ただし、石破氏が掲げる「アジア版NATO」や日米地位協定改定などの構想は憲法や米国側の反発もあり実現には高いハードルがあるとの指摘がある。
- 政治改革・行政: 自民党マニフェストで謳われた政治資金の透明化や議員歳費返納などの改革についても議論が続く。2024年通常国会で政治資金規正法改正が成立し透明性強化を図ったが、第三者機関設置など「改革の終わりなき取り組み」は引き続き課題となっている。
自民党マニフェスト達成度
自民党2024年衆院選マニフェスト(政権公約)に照らし、石破政権の達成状況を検証する。
- 賃上げ・経済成長: 公約は「物価上昇を上回る賃金向上」を掲げた。石破政権も同様の目標を明示し、2040年までの所得増大計画や、2029年度までに実質賃金年+1%の上昇定着計画を実行中。減税より賃上げを重視する方針も明確になっている。一方、実際の賃金上昇率は経済状況の影響で未確定であり、今後の成長・分配サイクルへの定着が課題となる。
- 教育無償化: 公約では高等教育無償化の大胆拡大を謳い(収入にかかわらず大学・高専等へ進学可能に)。石破政権では高校授業料の無償化を実現し、所得制限を撤廃した。大学など高等教育の無償化についても引き続き支援強化を掲げている。
- 子育て支援: 公約の「加速化プラン」に基づき、児童手当抜本拡充や育休取得率向上が謳われた。石破政権下では児童手当の所得制限撤廃・支給対象拡大が実施され、出産育児一時金も大幅引き上げが続く(前政権の施策ではあるが継続)。男性の育児休業取得促進策も強化されている。
- 政治改革: 公約は政治資金の透明化や報告制度見直しなど改革継続を約束した。2024年に政治資金規正法を改正し透明性を高めたものの、第三者監査機関設置などの抜本改革は未完で、公約どおり「不断の改革」にはまだ途上である。
- 外交・安全保障: 公約は激動の世界情勢に対応した外交・安全保障を掲げ、憲法改正も言及していた。石破政権は日米同盟強化やFOIP維持を継承し、各国との対話を続けている。ただし「アジア版NATO」構想や地位協定の対等化は政治的困難が指摘されており、実現には至っていない。災害対応強化も継続中で、公約どおりの総合的対策が進められている。
政権間比較と総合評価
主要分野で石破政権を過去の安倍・菅・岸田政権と比較し、評価する。
- 経済政策: 安倍政権は「アベノミクス」による大胆な金融緩和・財政出動で株価上昇やデフレ脱却を進めたが、期待した持続的インフレには届かず高齢化下で財政赤字は依然大きい(評価:安倍政権は経済面で一定の成果あり)。菅政権は携帯料金引き下げやワクチン接種迅速化など具体策を推進し、デジタル改革庁創設など構造改革も行った。岸田政権は2024年春闘で5.10%の賃上げ(33年ぶり高水準)を実現し、実質賃金が2年ぶりにプラス転換した。石破政権は賃上げ策を最優先し、名目GDP目標も高く掲げているが、政策実行から日が浅く成果はまだ限定的である。現時点で賃金上昇は進みつつあるものの、インフレ抑制との兼ね合いで安定的な底上げに向けた歩みは続いている(評価:石破政権の経済政策は方向性は合致しているが、実績評価は留保)。
- 外交・安全保障: 安倍政権は日米同盟強化、自由主義勢力連携の発展(FOIP提唱)、防衛費増大など基盤を築いた。菅政権も安倍路線を継承し、リーダーシップを発揮した。岸田政権はG7広島開催で核廃絶を訴えるなど外交実績が評価され、対米関係でも堅実な対応を行った。石破政権は就任後も日米会談を重ね、FOIPと同盟強化を掲げる姿勢に変わりはない。在任中に目立った外交成果や安全保障法制の成立はまだないが、多国間対話の増加で国際協調の継承を図っている。一方、石破首相の「アジア版NATO」構想や地位協定見直しなど、従来の同盟関係の大幅な再定義には実現性の疑問がある。総じて、外交・安保面では先行政権からの路線を踏襲しつつ、新たな提案は議論段階にとどまる(評価:安倍~岸田政権が築いた枠組みを維持・継承したが、新たな成果はこれから)。
- 社会政策: 安倍政権は子育て支援や介護保険改革を進め、消費税増収財源を福祉に充てた。菅政権は不妊治療保険適用や携帯料金引き下げ、東京五輪開催などを実現した。岸田政権では児童手当の拡充や出産育児一時金の大幅増額が行われた。石破政権も高校無償化など教育支援や子育て支援を強化しており、先行政権が進めた政策を引き継ぎつつ抜本化を図っている。医療・年金など全世代型社会保障の構築も公約には掲げられており、今後の具体策が注目される(評価:社会政策分野は前政権の課題を継続して取り組んでおり、大きな改善努力が見られる)。
- 政治改革: 安倍政権下では憲法改正は実現せず、政治資金問題や公文書問題が発生した。菅政権ではデジタル改革推進法や行政手続のオンライン化など行政改革が進んだ一方、内政では課題も多かった。岸田政権では2025年1月施行の政治資金規正法改正などが実現したが、政治不信を払拭できず総裁交代に至った。石破政権は政治資金透明化の公約を引き継ぎ、追加改革を検討するとしているが、現時点で大きな進展はない。内部統制強化や党改革を掲げるものの、実効性の高い制度改革には課題が残る(評価:政治改革は先行政権から積み残しが多く、石破政権の取り組みは未完成の印象)。
以上を総合すると、石破政権は政策の方向性では経済成長や物価高対策、社会保障の充実など自民党マニフェストと整合的な取組みを進めているものの、発足間もないため目立った新成果はまだ少ない。国民の内外からの評価も厳しく、2025年3月の世論調査では支持率が26%に急落した。主要政策分野での実績を踏まえると、評価は控えめと言わざるを得ない。総合評価は10点満点中5点程度と考えられる。各分野での評価を併せて考慮すると、石破政権は先行政権と比べて顕著な政策転換やブレークスルーを示しておらず、現時点で中位の評価にとどまるといえる。
参考資料: 自民党公式発表、朝日新聞世論調査、Bloomberg記事、日米同盟・外交報道、公明党報告など。
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